ココがポイント
今回の書籍考察は…「地域再生の罠 ~なぜ市民と地方は豊かになれないのか?~」
…「地域創生を実現します」と空手形を約束する諸施策や成功事例集は、今も乱造されている。だが…(中略)実は不適切だからである。
という世の中の地域創生の成功事例、モデルを推奨する世の中、コンサルタントに対して一石を投じる表紙の一説からはじまる本書。今後の地域創生にどんな示唆を与えてくれるか考察を述べていきます。
<要約と本書のポイント>
各地で地域再生に取り組んでいる。「だけど…」うまくいかない… そんな地域再生がうまくいかない理由を「だけど…」ではなく「だから‥」と考え因果関係を解き明かすストーリー。
1章:大型商業施設と地域衰退の関係性と理由
◆顧客の不満や本音は上層部(首長)に届かない(情報収集のスキルとセンスの問題)
※アンケートの【80%以上】は既にある結論を強化するために使われる(恣意的に操作)
◆「模倣品」は立地(周辺環境)、サービス提供者(スタッフ)、組み合わせ(他店舗)が重要
◆公共施設は利用率が低くても「失敗か否か」ではなく「今後も必要か否か」になりがち
◆「開業時とイベント時はにぎわう…」「持続不能な一時的賑わい…」と過剰報道問題
2章:成功事例の安易な模倣が地域衰退を加速させる
◆商店街再生のウソ。成功事例と言われる商店街の大半が「閑古鳥が鳴いている」
◆「ユーザー・市民の目」「支援社・提供者の目」で成功と失敗が180度変わる
◆「顧客」も「売り手」もいない商店街はそもそも必要か? ①イベント事業 ②空き店舗対策事業
◆「選択と集中」が必要「PPM」は商店街ではなく、自治体主導で!
◆箱モノのレトロ化 ~ALWAYS三丁目の夕日~は失敗する。交流の再生は「おもてなしの心」
◆チャレンジショップは金融支援だけでなく、ハードルを下げ挑戦者の立場に寄り添う。
3章:間違いだらけの前提
◆失敗原因の根底は「前提条件の誤り」誤った前提からは効果が出ず…むしろ弊害を及ぼす
◆スローフードとは「大切な人との交流」まずは地元に愛され口コミで観光客へ広げる
◆「資本や規模」との勝負はブランド化ではなく「消費者と生産者の対話」で補う
◆ブランド化は大手との過当競争に巻き込まれ、ブランド化は一部の業者しか蜜を啜れない
◆観光業界と地域との連携を疎かにすると…集客が売り上げに結びつかない施設となる
◆おやじの論理の問題と若者の本音(消費者インサイト)に耳を傾ける
◆店舗づくりは「景観形成」「経済促進」「若者定着」など複数視点で考える。
4章:地方自治体と土建学者が地方を衰退させる
◆前例主義(リスクや面倒さを嫌う)の強い地方自治体と安易な模倣により衰退の連鎖
◆首長の意欲で地方自治体を変える(スピード、責任、ファーストペンギン)
◆公共交通機関(鉄道廃線後の街は衰退)は単体の採算性ではなく、地域の発展性で仕分け
◆成功事例は土建学者が描いた理想郷を自画自賛したもの
◆市民はコンパクトシティ導入に反対か無関心。対立は「既得権」による損得勘定
◆ネーミング・ライツのリスクと名称変更による使用用途の不透明化
5章:罠を解き明かす
◆「ハード事業(箱モノ)の失敗」から「人の心を捉えるソフト事業」の転換がカギ
◆稀にある成功事例は模倣が困難…だから持続しているとも言える(葉っぱビジネス)
◆地域づくりの仕組みを変える(プロダクトアウト→マーケットインの思考)
6章:7つのビジョンで豊かになる
◆真のボランティアをも惹きつける活動でないと持続できない(コミケ)
◆地域再生の目的は?「地域の成功?」「市民の幸せ?」成功=経済的豊かさ、幸せ=心の豊かさ
◆「私益より公益」「経済利益より人との交流」「立身出世より対等で心地よい交流」
「器より市民が先に尊重される地域づくり」「市民の地域愛」
「交流を促すスローフード」「心のよりどころとなるスポーツクラブ、居場所」
7章:スローフードによる”脱”B級グルメとブランド化
◆需要創出型の飲食店づくり(選ぶ楽しみ、食べる楽しみ)
◆ソウルフード(学生時代から胃袋を掴む)
◆お金のバラマキが行政依存のもと。自立と顧客志向を促す取り組み
8章:低未利用地に交流を促す
◆施設の位置づけを「変更」「追加」することで新たな価値、顧客を創出(銭湯とランナー)
◆顧客は地域全体で共有し、箱モノで雇用も同時に創出する。
◆人の普遍的ニーズ(健康、食、交流)を満たせば街は賑わい潤う
◆地域全体の利益の為に「戦略的赤字施設」をつくる(入口フリー)
9章:公的支援は公益空間に集中
◆公益空間は利益が出ない。公的支援は交流を促す場所に「選択と集中」する
◆商店街の「所有」と「経営」の分離→失敗として太田市の風俗街
◆机上でつくる地域から市民が現場でつくる地域へ(物語消費の場)
ココがポイント
今回の書籍考察 <気づきと学び、共有・実践したい事>
3つのポイント!
顧客は誰か?
かの有名な<ドラッカーの5つの質問!>
◆第1の質問「われわれの使命は何か」 ◆第2の質問「われわれの顧客は誰か」
◆第3の質問「顧客にとっての価値は何か」◆第4の質問「われわれの成果は何か」
◆第5の質問「われわれの計画は何か」
地域再生、地域創生、地方創生など呼び方はそれぞれですが…
それらは誰(顧客)の為に行っている行為でしょうか?
・街の繁栄 ・市民の豊かさ ・観光客への価値 ・それら全て
誰の為に行う行為なのか?が明確であれば、施策や学ぶべきことももっと明確になるでしょう。
誰の為?が決まったら、その相手へ与える価値は何か?そして、その成果指標(KGI、KPI)は何か?
特に”誰の為に行う行為なのか?”を明確にすることが最優先課題でしょう!
仮に「市民の豊かさ」とするなら…率直な意見に耳を傾けることが地域再生の出発点でしょう。
綺麗ごとではなく…「真の何の為?」を声高に叫べる大義が欲しいですね。
再生、創生の成功を定義する
「経済的な豊かさ」「心の豊かさ」など一見、相反する豊かさ
何を求めた施策かを明確にすることで、取り組みの成否を明確にする。
「物(経済)心(精神)両面の豊かさ」が重要ですが…
成功を定義してスタートすることで、無用な論争(「経済が…」「心が…」「文化が…」)を避けられます。
安易な模倣がうまくいかない本当の理由
1.成功事例を視察して、模倣してみても、実は成功事例で無い為、失敗する
これは、リテラシー能力の問題ですね。そして、ただ模倣ではなく視察は自分たち仕様にアレンジする思考や能力のある方が行わないと成果にはつながらないでしょう。
また方法は決して一つではなく、まだ知らない方法もきっとあるはずです。
2.そもそも前提条件が異なるから失敗する
福山雅治さんのモテる秘訣を聞いて、一般人がマネしても成功しないのと理屈は同じ。
地域ごとの特色・武器は異なる(イケメンではない戦い方もありますね)
自分たちの地域での戦い方(「相手から選ばれる方法」「自分たちが幸せになる方法」)を考え、成功事例や他事例からヒントを得ましょう!
その上で、地域の資源を考え「選択と集中」「PPM」も自治体主導でリーダーシップをもって全体最適、持続可能な戦略の構築を模索していくことが重要でしょう。
詳しくは本書を読んで、事例など筆者の考えにも触れてみてください"